猫の点滴(輸液)の費用を、日本獣医師会の全国調査(回答1,096施設)の原文だけで整理しました。皮下輸液の中央値は2,500円、静脈内輸液は4,000円。ただし同じ調査で、皮下輸液は7,500円以上と答えた施設が0件なのに対し、静脈内輸液には23件(2.1%)残ります。中央値の差は1,500円ですが、分布の右端があるかどうかが違います。「対応外」は0.7〜1.5%で、歯科の項目とは正反対にほぼ全施設が扱っています。入院をともなう場合の入院料(猫は中央値2,500円・ICUは23.8%が対応外)と、往診料(16.9%が対応外)も同じ調査から並べます。
この2つの数字だけを見ると、差は1,500円です。ところが同じ調査の分布を開くと、もっと大きな違いが出てきます。
皮下への輸液は、5,000〜7,500円未満の10件で回答が止まっています。7,500円以上の区分は、10,000円台も20,000円台も、すべて0件でした。静脈内への輸液は、同じ7,500円以上に23件(2.1%)が残ります。中央値の差より、この右端の差のほうが効きます。
そしてもうひとつ。この調査に「点滴」という項目はありません。あるのは「輸液(静脈内)」「輸液(皮下)」と、そこへ入れる手技としての「静脈注射」「経留置針注射」「皮下注射」「筋肉注射」で、6つが別々に集計されています。ひとつの処置の値段ではなく、部品ごとの値段が並んでいる資料です。
このページは費用の情報です。点滴が必要かどうか、いつ受けるか、自宅でどうするかは書きません。獣医師の監修も受けていません。点滴が使われる場面は猫ごとに違い、同じ「点滴」でも目的が違えば内容も回数も変わります。判断はかかりつけの動物病院にご相談ください。
「点滴」は6つの別項目に分かれている
日本獣医師会(JVMA)の診療料金実態調査から、輸液と注射料の全項目です。回答した1,096施設の分布から、中央値・最も多い金額帯・「対応外」の割合を並べます。
| 項目 | 中央値 | 最も多い金額帯 | 「対応外」 |
|---|---|---|---|
| 輸液(静脈内) | 4,000円 | 3,000〜5,000円未満 480件(43.8%) | 16件(1.5%) |
| 輸液(皮下) | 2,500円 | 1,000〜2,000円未満 462件(42.2%) | 8件(0.7%) |
| 注射料(経留置針注射) | 2,500円 | 1,000〜2,000円未満 383件(34.9%) | 34件(3.1%) |
| 注射料(静脈注射) | 1,500円 | 1,000〜2,000円未満 516件(47.1%) | 9件(0.8%) |
| 注射料(皮下注射) | 1,500円 | 1,000〜2,000円未満 713件(65.1%) | 3件(0.3%) |
| 注射料(筋肉注射) | 1,500円 | 1,000〜2,000円未満 706件(64.4%) | 10件(0.9%) |
出典: 日本獣医師会『家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査』I 注射料・J 輸液(2026-08-17確認)
これらを足し算しません。中央値どうしを足した金額は、どの猫の請求額でもないからです。輸液料と注射料が両方かかるのか、どちらかに含まれるのかも、この調査の書き方からは決められません。並べているのは「請求書に載りうる項目名と、その項目の全国的な分布」までです。
「経留置針注射」は、血管に留置針(カテーテル)を入れて薬液を投与する手技の項目です。中央値は2,500円で、注射料4項目の中では最も高く、対応外の34件(3.1%)も最も多くなっています。
皮下と静脈内で、上限のあり方が違う
ここがこのページでいちばん書きたいところです。同じ「輸液」でも、分布の形が違います。全18区分をそのまま並べます。
| 金額帯 | 輸液(皮下) | 輸液(静脈内) |
|---|---|---|
| 無料 | 3件(0.3%) | 2件(0.2%) |
| 500円未満 | 8件(0.7%) | 1件(0.1%) |
| 500〜1,000円未満 | 41件(3.7%) | 13件(1.2%) |
| 1,000〜2,000円未満 | 462件(42.2%) | 134件(12.2%) |
| 2,000〜3,000円未満 | 397件(36.2%) | 314件(28.6%) |
| 3,000〜5,000円未満 | 152件(13.9%) | 480件(43.8%) |
| 5,000〜7,500円未満 | 10件(0.9%) | 96件(8.8%) |
| 7,500〜10,000円未満 | 0件 | 16件(1.5%) |
| 10,000〜12,500円未満 | 0件 | 2件(0.2%) |
| 12,500〜15,000円未満 | 0件 | 1件(0.1%) |
| 15,000〜17,500円未満 | 0件 | 3件(0.3%) |
| 17,500〜20,000円未満 | 0件 | 0件 |
| 20,000〜25,000円未満 | 0件 | 1件(0.1%) |
| 25,000〜30,000円未満 | 0件 | 0件 |
| 30,000〜40,000円未満 | 0件 | 0件 |
| 40,000〜50,000円未満 | 0件 | 0件 |
| 50,000円以上 | 0件 | 0件 |
| 対応外 | 8件(0.7%) | 16件(1.5%) |
| 無回答 | 15件(1.4%) | 17件(1.6%) |
| 合計 | 1,096件 | 1,096件 |
出典: 同調査 J-6 輸液/皮下・J-5 輸液/静脈内(2026-08-17確認)。18区分と無回答の件数を機械的に取り出し、両方とも合計が1,096に一致することを確認しています
7,500円以上と答えた施設は、皮下が0件、静脈内が23件(2.1%)。皮下輸液の料金には、この調査の範囲で上振れがありません。同じ形は注射料でも出ていて、皮下注射は3,000〜5,000円未満の19件(1.7%)で止まり、5,000円以上は全区分0件でした。
理由は書きません。調査に記載がないからです。分布の形がそうなっている、というところまでにします。
「対応外」がほとんど無い。歯科とは逆の面
このサイトでは同じ調査から歯科の費用も書いていますが、あちらは様子がまったく違いました。並べます。
| 処置 | 中央値 | 「対応外」の施設 |
|---|---|---|
| 輸液(皮下) | 2,500円 | 8件(0.7%) |
| 輸液(静脈内) | 4,000円 | 16件(1.5%) |
| 歯石除去 | 11,250円 | 29件(2.6%) |
| 口鼻瘻の処置 | 8,750円 | 376件(34.3%) |
| 根管治療(歯を抜かずに残す) | 6,250円 | 750件(68.4%) |
出典: 同調査 J 輸液・N-11 歯科/口腔外科(2026-08-17確認)。歯科の数値は猫の歯石取り・抜歯の費用で詳しく扱っています
歯科では「値段の前に、扱っている病院かどうかが分かれる」と書きました。点滴はそうなっていません。1,096施設のうち99%以上が金額を答えています。分かれるのは、扱うかどうかではなく、どこまで上がるかのほうです。
入院をともなうとき
通院で点滴を受けるのか、入院して受けるのかで、載る項目が変わります。入院料は同じ調査に別の節があります。
| 項目 | 中央値 | 最も多い金額帯 | 「対応外」 |
|---|---|---|---|
| 入院料(猫) | 2,500円 | 2,000〜3,000円未満 498件(45.4%) | 26件(2.4%) |
| 入院料(ICU) | 4,000円 | 3,000〜5,000円未満 226件(20.6%) | 261件(23.8%) |
出典: 同調査 F-13 入院料/猫・F-14 入院料/ICU(2026-08-17確認)
集中治療室(ICU)は、4施設に1つ弱(23.8%)が対応外でした。中央値は4,000円と出ていますが、その設定を持っている施設のほうで計算された数字です。
入院料は、この調査で猫の区分が独立して立っている数少ない項目のひとつです。犬は体格で4つに分かれています。
| 区分 | 入院料の中央値 |
|---|---|
| 猫 | 2,500円 |
| 犬(小型) | 2,500円 |
| 犬(中型) | 4,000円 |
| 犬(大型) | 4,000円 |
| 犬(特大) | 6,250円 |
出典: 同調査 F-9〜F-13 入院料(2026-08-17確認)
猫は犬(小型)と同じ帯でした。
なお入院料についても、1日あたりかどうかの注記が原文にありません。「1回あたり」と書かれているのは調剤料の2項目だけで、入院料・輸液・注射料には単位の記載がありませんでした。
通院と往診の料金
点滴のために何度か通う場合は、診察料も毎回のります。
| 項目 | 中央値 | 最も多い金額帯 | 「対応外」 |
|---|---|---|---|
| 再診料 | 750円 | 500〜1,000円未満 848件(77.4%) | 0件(0.0%) |
| 往診料(通常) | 2,500円 | 2,000〜3,000円未満 323件(29.5%) | 185件(16.9%) |
出典: 同調査 A-2 診察料/再診料・B-3 往診料/通常(2026-08-17確認)
再診料は、この調査で「対応外」が1件も無かった項目です。1,096施設すべてが金額を答えています。往診はその逆で、6施設に1つ(16.9%)が対応外でした。家まで来てもらう選択肢は、どの病院にもあるわけではありません。
窓口で確認しておくこと
金額の前に、この調査の書き方から「決まっていない」と分かることを、そのまま質問の形にしました。診断や治療の内容ではなく、請求の建て付けについての確認です。
| 確認すること | この調査から言えること |
|---|---|
| その金額は1回あたりか、1日あたりか | 輸液・注射料・入院料に単位の注記がない。決められるのは病院側だけ |
| 輸液料に薬液や輸液セットの費用が含まれるか | 内訳の注記がない |
| 輸液料と別に、注射(留置針)の料金がのるか | 輸液(J節)と注射料(I節)は別の項目として集計されている |
| 皮下と静脈内のどちらになるか | 分布の右端が違う。静脈内は7,500円以上の回答が2.1%残る |
| 入院になった場合、入院料が別にのるか | 入院料は別の節(F)で、猫の区分は中央値2,500円 |
| 診察料が毎回かかるか | 再診料の中央値は750円。対応外は0件 |
出典: 内訳の建て付けは同調査の節構成と注記の有無から、金額は各項目の中央値から(2026-08-17確認)
うちの2匹には、点滴の記録がありません
このサイトはココ(ブリティッシュショートヘア)とちくわ(マンチカン)と暮らす家で作っています。うちの記録として出せる医療費があれば書くところですが、2匹とも点滴を受けたことがなく、記録がありません。
だからこのページに「うちの場合」の欄はありません。無いものを、あるように書かないためです。
この数字をどう読むか
最後に、上の表を自分の猫に当てはめるときの注意を3つ書きます。
1. 調査は2021年です。 令和5年9月に公表された資料ですが、調査そのものは令和3年8月2日から10月25日にかけて行われました。2026年8月時点で約5年前の数字です。日本獣医師会の同じ調査は平成6年・10年・27年、令和3年の4回で、次回の予定は公表資料に見当たりませんでした。
2. 回答は全国の動物病院の一部です。 1,096施設からの回答で、これは開業会員構成獣医師6,739名の16.2%にあたります。回答した施設の96.3%が一次診療でした。
3. 輸液と注射料は、犬と猫を分けていません。 この調査で猫の区分が独立して立っているのは、入院料・輸血料・不妊手術(猫去勢/猫避妊)・猫用ワクチン4種・ウイルス検査(FIV/FeLV)・輸血関連(猫血液型)です。輸液(J節)と注射料(I節)にはその設問がありません。だから「猫の皮下輸液は2,500円」とは言えません。「犬猫を区別しない設問での、その施設の輸液料が2,500円」までです。
同じ調査から書いた費用のページは、猫の健康診断の費用・猫のワクチンの費用・猫の歯石取り・抜歯の費用・猫の避妊去勢手術の費用と助成にもあります。年齢ごとにかかった診療費の実績は猫の医療費は何歳からいくら上がるかにまとめています。
よくある質問
猫の点滴の費用はいくらですか?
日本獣医師会の全国調査(回答1,096施設)では、皮下への輸液が中央値2,500円、静脈内への輸液が中央値4,000円でした。最も多い金額帯は、皮下が1,000〜2,000円未満で462件(42.2%)、静脈内が3,000〜5,000円未満で480件(43.8%)です。ただしこの金額が1回あたりなのか1日あたりなのかは、原文に単位の注記がないため確認できませんでした。また輸液とは別に、点滴を入れる手技として静脈注射(中央値1,500円)や経留置針注射(2,500円)の項目が立っています。実際の請求は組み合わせで決まるので、窓口で内訳を確認してください。
皮下点滴と静脈点滴で費用はどのくらい違いますか?
中央値では皮下2,500円・静脈内4,000円で、差は1,500円です。ただし同じ調査の分布を見ると、違いは中央値よりも上限側に出ています。皮下輸液は5,000〜7,500円未満の10件(0.9%)で回答が止まり、7,500円以上の区分はすべて0件でした。静脈内輸液は7,500円以上と答えた施設が23件(2.1%)残り、20,000〜25,000円未満にも1件あります。同じ「点滴」でも、金額が上に伸びる余地があるかどうかが違う、という読み方になります。理由についてはこの調査に記載がないため、このサイトでは推測しません。
点滴を扱っていない動物病院はありますか?
この調査で「対応外」と答えた施設は、皮下輸液が8件(0.7%)、静脈内輸液が16件(1.5%)でした。注射料も皮下注射3件(0.3%)・静脈注射9件(0.8%)・経留置針注射34件(3.1%)で、ほとんどの施設が扱っています。同じ調査でも歯を残す根管治療は68.4%が対応外だったので、項目によって様子がまったく違います。点滴について分かれるのは、扱っているかどうかではなく金額のほうです。
入院して点滴を受けるといくらかかりますか?
入院料は猫の区分が独立して立っており、中央値2,500円でした。最も多い金額帯は2,000〜3,000円未満で498件(45.4%)、次いで3,000〜5,000円未満が390件(35.6%)です。「対応外」は26件(2.4%)でした。集中治療室(ICU)は中央値4,000円ですが、対応外が261件(23.8%)あり、4施設に1つ弱は設定がありません。なお入院料についても、1日あたりかどうかの注記は原文にありませんでした。ここに輸液料や注射料が加わるのか含まれるのかも、調査からは分かりません。
自宅で点滴をする場合の費用は載っていますか?
載っていません。この調査の輸液の項目は動物病院で行う料金で、自宅で行う場合の設定はありませんでした。薬液や輸液セットなどの材料費が輸液料に含まれるかどうかの注記もありません。したがってこのページには、自宅で行う場合の金額を書いていません。自宅での実施を含めてどうするかは、かかりつけの動物病院にご相談ください。
この記事が当てはまる範囲
料金は日本獣医師会の全国調査(調査期間 令和3年8月2日〜10月25日・回答1,096施設)の数値です。回答は開業会員構成獣医師6,739名のうち16.2%で、母集団に偏りがあります。輸液と注射料の項目は、不妊手術やワクチンと違って犬と猫を分けていません。したがって「猫の皮下輸液はいくら」と断定できる数字ではなく、犬猫を区別しない施設の料金として読んでください。猫の区分が独立して立っているのは入院料・輸血料・不妊手術・猫用ワクチン・FIV/FeLV検査・輸血関連(猫血液型)です。金額が1回あたりか1日あたりかは、原文に単位の注記がないため確定できません。
一次資料に見つからなかったこと
- 猫だけの輸液・注射の料金(この調査の輸液と注射料には、犬猫を分ける設問がありません)
- 輸液料が1回あたりの金額か、1日あたりの金額か(「1回あたり」の注記が付いているのは調剤料だけで、輸液・注射・入院料には単位の注記がありません)
- 輸液料に薬液や輸液セットなどの材料費が含まれるかどうか(内訳の注記がありません)
- 自宅で行う皮下輸液(在宅輸液)に関する費用項目(調査の項目は動物病院の料金で、自宅で行う場合の設定はありません)
- 点滴を何回・何日続けるかの目安(これは料金の調査で、治療の内容や頻度は扱っていません)
- 輸液・注射・入院料の経年比較(前回調査と比べているのは初診料・再診料・時間外診療(深夜)・健康診断の4項目だけです)
- 2021年より新しい全国の料金調査(日本獣医師会の調査は平成6年・10年・27年、令和3年の4回で、次回の予定は公表資料に見当たりません)