猫の健康診断の費用を、日本獣医師会の全国調査(回答1,096施設)だけで整理しました。1日ドックの中央値は16,250円。ただし同じ調査で「対応外」=ドックのメニューを持たない施設が37.0%あり、4割弱の病院ではそもそも申し込めません。だから項目を組み立てたときの費用も要ります。初診料1,500円・CBC検査1,500円・生化学検査6,250円・尿検査1,500円・腹部エコー4,000円・エックス線4,000円といった項目別の中央値を並べ、頻度の目安はAAHA/AAFPの一次資料から示します。この調査が2021年8〜10月に実施されたもので、検査項目は犬猫を区別していないことも先にお伝えします。
先に結論から書きます。
猫の健康診断(1日ドック)の料金は、日本獣医師会の全国調査で中央値16,250円でした。ただし同じ調査で、37.0%の施設が「対応外」と答えています。 つまり4割近い病院には、ドックというメニュー自体がありません。
だからこのページでは、ドックの金額だけでなく健診を構成する項目ひとつひとつの中央値も並べます。ドックがない病院で「じゃあ何を頼めばいくらになるのか」を、自分で組み立てられるようにするためです。
先に3つ、正直にお伝えしておきます。この調査は2021年8〜10月に実施されたもので(公表は2023年9月)、2026年の今からは5年前の数字です。回答は全国の開業獣医師6,739名のうち16.2%にあたる1,096施設で、母集団に偏りがあります。そして検査の項目は、犬と猫を分けて聞いていません。
このページは費用の情報です。検査結果の読み方や、どの検査を受けるべきかの判断は書きません。獣医師の監修も受けていません。猫の体調に気になるところがある場合や、検査の内容を決めるときは、かかりつけの動物病院にご相談ください。
1日ドックは中央値16,250円。ただし最も多い回答は「対応外」
日本獣医師会(JVMA)は、全国の獣医師を対象に診療料金の実態調査を行っています。平成6年から数えて4回目にあたるのが、いま公表されている調査です。この中に「健康診断(1日ドック)」という項目そのものがあります。
| 回答 | 施設数 | 割合 |
|---|---|---|
| 対応外 | 405件 | 37.0% |
| 20,000〜25,000円未満 | 111件 | 10.1% |
| 15,000〜17,500円未満 | 87件 | 7.9% |
| 10,000〜12,500円未満 | 86件 | 7.8% |
| 12,500〜15,000円未満 | 83件 | 7.6% |
| 17,500〜20,000円未満 | 82件 | 7.5% |
| 7,500〜10,000円未満 | 63件 | 5.7% |
| 25,000〜30,000円未満 | 63件 | 5.7% |
| 無回答 | 53件 | 4.8% |
| 30,000〜40,000円未満 | 31件 | 2.8% |
| 5,000〜7,500円未満 | 17件 | 1.6% |
| 3,000〜5,000円未満 | 6件 | 0.5% |
| 40,000〜50,000円未満 | 5件 | 0.5% |
| 50,000円以上 | 3件 | 0.3% |
| 2,000〜3,000円未満 | 1件 | 0.1% |
| 中央値 | 16,250円 | 全1,096件 |
出典: 日本獣医師会『家庭飼育動物(犬・猫)の診療料金実態調査』(麻酔料を含まない)
この表でいちばん目を引くのは、金額ではなくいちばん上の行です。回答した施設の37.0%が「対応外」。1日ドックというまとまったメニューを持っている病院のほうが、実は少数派だとも読めます。
料金が設定されている施設だけを見ると、10,000円台から20,000円台前半に回答が広く散らばっています。「猫の健康診断はいくら」と一言で言いにくいのは、この散らばりのためです。
ドックがない病院では、項目を組み立てることになる
同じ調査には、健診で使われる検査の料金も項目ごとに載っています。ドックのメニューがない病院で相談するときは、この単位で話が進みます。
| 項目 | 中央値 | 備考 |
|---|---|---|
| 初診料 | 1,500円 | 前回調査(平成27年)は1,386円 |
| 再診料 | 750円 | 同 726円 |
| 採血料 | 750円 | 「無料」の施設が321件=29.3% |
| CBC検査(血球計算) | 1,500円 | |
| 生化学検査(スクリーニング) | 6,250円 | 血液検査の中で最も高い項目 |
| 尿検査・採取料(圧迫) | 0円 | カテーテル採尿・膀胱穿刺は各1,500円 |
| 尿検査・検査料 | 1,500円 | 尿比重・試験紙・沈渣 |
| 糞便検査・採取料 | 0円 | |
| 糞便検査(直接法/集卵法) | 各750円 | |
| エックス線・単純撮影 | 4,000円 | 「対応外」は2.6%だけ=ほぼ全施設が対応 |
| 腹部エコー | 4,000円 | |
| 心エコー | 4,000円 | |
| ウイルス検査(FIV) | 4,000円 | 猫専用の項目 |
| ウイルス検査(FeLV) | 2,500円 | 猫専用の項目 |
出典: 同上(すべて麻酔料を含まない)
採血料の行に注目してください。3割の病院は採血そのものに料金をつけていません(1,096件中321件が「無料」)。検査料の中に含めているということです。項目ごとの金額を病院間で比べても、あまり意味がないのはこのためです。比べるなら、検査全体でいくらになるかで比べることになります。
足し算してみると
項目の中央値を機械的に足すと、こうなります。
- 初診料1,500円+採血料750円+CBC1,500円+生化学6,250円+尿検査1,500円 = 11,500円
- ここに腹部エコー4,000円を足すと 15,500円
- さらにエックス線4,000円を足すと 19,500円
1日ドックの中央値16,250円は、ちょうどこの帯に収まります。
ただしこの足し算には、はっきりした限界があります。別々に集計された中央値を機械的に合計しただけで、実在する病院の請求額ではありません。 中央値どうしを足した数字は、統計としては「どこかの誰かの合計」を意味しません。ドックとしてまとめた場合の設定料金は別にありますし、検査の組み合わせも猫の年齢や状態で変わります。
金額を知りたいときの確実な方法はひとつです。かかりつけの病院に、ドックの場合と個別に受けた場合の見積もりを両方聞く。この記事の数字は、その見積もりが相場からかけ離れていないかを確かめるための物差しとして使ってください。
料金は上がっている(前回調査との比較)
この調査には、前回(平成27年)との比較が載っています。
| 項目 | 平成27年 | 令和3年 |
|---|---|---|
| 健康診断(1日ドック) | 14,021円 | 16,250円 |
| 初診料 | 1,386円 | 1,500円 |
| 再診料 | 726円 | 750円 |
出典: 同調査の総括(中央値どうしの比較)
6年ほどで、ドックは2,229円上がりました。そして令和3年からさらに5年が経っています。この上昇の傾向が続いているなら、いま窓口で提示される金額は16,250円より上でも不思議はありません。ただし、それを裏づける新しい全国調査は見当たりませんでした。ここは推測せず、「2021年時点で16,250円だった」という事実だけをお伝えします。
何歳から、どのくらいの頻度で
費用の次に迷うのが頻度です。ここは日本の公的資料に数値が見当たらないため、獣医専門団体の一次資料を使います。
- すべての猫: 最低でも年1回の診察。猫ごとの必要に応じて頻度を上げる(2021 AAHA/AAFP Feline Life Stage Guidelines)
- シニア猫(10歳超): 最低6か月ごと。慢性疾患があればさらに頻回に(同)
- 血液検査などのベースライン検査: 7〜10歳から少なくとも年1回。年齢とともに頻度を上げる(2021 AAFP Feline Senior Care Guidelines)
- 非常に高齢の猫、慢性疾患の管理中、複数の病気を抱える猫: 3〜6か月ごとの評価が必要になることもある(同)
なお、AAFPのシニアケアガイドラインは、シニアの入り口を「10歳超」としつつ、猫によっては8歳ごろからシニアとして扱うほうが適切な場合があるとも書いています。品種によってはもっと早いこともある、とも。
iCatCareは頻度の数値を出しておらず、「獣医師が猫の年齢と健康状態に応じて助言する」とだけ書いています。年齢だけで機械的に決まるものではない、ということだと受け取っています。
うちのココは2歳、ちくわは1歳です。AAHA/AAFPの目安に当てはめると、ベースライン検査を考え始める7〜10歳にはまだ届いていません。この年齢だと「最低でも年1回の診察」の側に入ります。ただしこれは年齢を目安に当てはめただけで、猫ごとの判断は別です(n=2の記録)。
この調査の限界(ここは正直に書きます)
数字を出したあとに書くのは順序が悪いようですが、大事なので繰り返します。
1. データは2021年のものです。 令和5年9月に公表された資料ですが、調査そのものは令和3年8〜10月に実施されました。「令和5年の料金」ではありません。
2. 回答は開業獣医師の16.2%です。 6,739名のうち1,096名。回答した施設の96.3%が一次診療でした。全国の平均というより、回答した施設の分布として読むのが正確です。
3. 検査の項目は、犬と猫を分けていません。 この調査では、手術の項目は「猫去勢」「猫避妊」と種別が立っており、犬については「体重10kgでの料金」という条件がついています。ところが初診料・血液検査・エックス線・エコーには、犬猫を分ける設問がありません。だから「猫のCBC検査は1,500円」とは言えません。「その施設のCBC検査は1,500円」までです。検査・診察の節で猫の区分が立っているのはウイルス検査(FIV・FeLV)と輸血関連(猫血液型)でした(犬と猫が対で立っているのは血液型だけです。2026-08-19に原文を再照合して追記)。ほかの節まで目次を全部見ると、猫用ワクチン4種のほかに入院料と輸血料にも猫の区分があります(2026-08-17に目次を全数照合して確認)。
4. 地域差はわかりません。 都市部と地方を分けた集計はありませんでした。
一次資料に見つからなかったこと
調べた範囲で、次のものは見つかりませんでした。無いものを無いと書いておきます。
- 猫だけの健康診断費用の全国データ
- 2021年より新しい全国調査(この調査は平成6年・10年・27年、令和3年の4回で、次回の予定は公表資料に見当たりません)
- 「猫の健康診断は年◯円」という公的な年間費用の目安
- 年齢別に「この検査を受けるべき」と項目を定めた公的基準
とくに最後のひとつは、健診の記事でよく見かける形です。AAHA/AAFPは頻度とベースライン検査を始める年齢は示しますが、「◯歳ならこの検査」という必須リストは示していません。猫の状態によって変わるからです。だから、このサイトでも作りません。
関連するページ
- 年齢別の医療費データ → 猫の医療費は年齢でどう増える?
- どんな病気にお金がかかるか → 猫の病気とお金のデータ
- 手術費と助成金 → 猫の避妊・去勢手術の費用と助成金
- シニアはいつから → 猫のシニアは何歳から?
このページについて(免責)
このページは、公表されている調査から健康診断の費用の目安を整理したものです。診断・治療の指南ではなく、獣医師の監修も受けていません。どの検査をいつ受けるかは猫の年齢・状態によって変わります。検査の内容と金額は、かかりつけの動物病院にご確認ください。
体調に気になるところがある場合は、健診を待たず動物病院にご相談ください。
よくある質問
猫の健康診断の費用はいくらですか?
日本獣医師会の全国調査(回答1,096施設)では、健康診断(1日ドック)の料金は中央値16,250円でした。ただし同じ調査で「対応外」と答えた施設が37.0%あり、4割弱の病院にはドックのメニュー自体がありません。その場合は必要な検査を組み合わせることになります。項目別の中央値は、初診料1,500円・採血料750円・CBC検査1,500円・生化学検査6,250円・尿検査1,500円・腹部エコー4,000円・エックス線の単純撮影4,000円です。いずれも麻酔料は含みません。なお、この調査は2021年8〜10月に実施されたもので、検査の項目は犬と猫を分けて聞いていません。実際の金額は病院ごとに違うので、受診前に見積もりを確認してください。
猫の健康診断は何歳から、どのくらいの頻度で受けるものですか?
AAHA/AAFPの2021年ガイドラインは、すべての猫について最低でも年1回の診察を、10歳超のシニア猫は最低6か月ごとの受診をすすめています。血液検査などのベースラインの検査については、AAFPのシニアケアガイドラインが「7〜10歳から少なくとも年1回」と書いており、非常に高齢の猫や慢性疾患の管理中、複数の病気を抱える猫では3〜6か月ごとの評価が必要になることもあるとしています。ただしこれは頻度の目安で、どの検査をいつ受けるかは猫ごとの判断になります。かかりつけの動物病院に相談してください。
1日ドックと、検査を個別に組み合わせるのはどちらが安いですか?
このサイトでは、どちらが安いかを断定できません。項目別の中央値を単純に足すと、初診料・採血料・CBC・生化学・尿検査で11,500円ほどになり、ここに腹部エコーやエックス線を足すと1日ドックの中央値16,250円に近づきます。ただしこの足し算は、あくまで別々の項目の中央値を機械的に合計したものです。実際にはドックとしてまとめた場合の設定料金があり、院内の基準や検査の組み合わせで変わります。同じ病院で「ドックの場合」と「個別の場合」の見積もりを聞くのが確実です。
採血料が無料の病院があるというのは本当ですか?
日本獣医師会の調査では、採血料を「無料」と答えた施設が1,096件中321件(29.3%)ありました。3割ほどの病院は採血そのものには料金をつけず、検査料の中に含めているということです。中央値は750円です。これは施設ごとの料金設定の違いなので、安い高いの判断材料にはなりません。検査全体でいくらになるかを聞くほうが実態に合います。
この記事が当てはまる範囲
日本獣医師会の全国調査(2021年8〜10月実施・回答1,096施設)の数値です。回答は開業会員構成獣医師6,739名のうち16.2%で、母集団に偏りがあります。また、この調査の検査・診察の項目は犬と猫を分けて聞いていないため、初診料・血液検査・エックス線・エコーの中央値は「猫の料金」ではなく「その施設の料金」として読んでください。検査・診察の中で猫の区分が立っているのはウイルス検査(FIV・FeLV)と輸血関連(猫血液型)で、ほかの節では猫用ワクチン・入院料・輸血料・不妊手術に猫の区分があります。金額はすべて麻酔料を含みません。
一次資料に見つからなかったこと
- 猫だけの健康診断費用の全国データ(この調査の検査項目は犬猫を区別していません)
- 2021年より新しい全国調査(日本獣医師会の調査は平成6年・10年・27年、令和3年の4回で、次回の予定は公表資料に見当たりません)
- 地域差のデータ(都市部と地方を分けた集計はありません)
- 「猫の健康診断は年◯円」という公的な年間費用の目安(項目の組み合わせが病院ごとに違うため、合計を定めた資料がありません)
- 年齢別に「この検査を受けるべき」と項目を定めた公的基準(AAHA/AAFPは頻度と開始年齢は示しますが、必須項目のリストは示していません)
出典