一人暮らしで猫を飼えるかを、一次資料にもとづいて整理しました。環境省の飼養基準に「一人暮らしでは飼えない」という規定はなく、あるのは管理できる範囲で飼うことなどの質的な義務です。判断材料になるのは留守番・お金・もしもの備えの3つ。iCatCareは健康な成猫は犬より長く留守番できるとする一方、子猫やシニアは長時間に向かないとしています。うちは一人暮らしではないので、体験談は書きません。書けるのは一次資料の中身と、2匹の実測費用です。
最初に、正直なことを2つ書きます。1つめ。「一人暮らしでは猫を飼えない」という公的な基準は存在しません。環境省の飼養基準を確認しても、世帯の人数に関する規定はありませんでした。2つめ。うちは一人暮らしではありません。だからこの記事に「一人暮らしで飼ってみた体験談」は書きません。書けないことを書いたふりをしないのが、このサイトの方針です。
そのうえで、一人暮らしの人が猫を迎える前に考える材料は、一次資料と実測から3つに整理できます。留守番・お金・もしもの備えです。順番に見ていきます。
この記事は一般的な情報です。診断や治療の指南ではなく、獣医師の監修も受けていません。個々の猫の健康や、迎えられるかどうかの最終的な判断に迷うときは、動物病院や譲渡元にご相談ください。
「一人暮らしだと飼えない」という基準はどこにも無い
まず前提から。環境省の「家庭動物等の飼養及び保管に関する基準」に書かれているのは、次のような質的な義務です(出典2)。
- 飼う数は管理できる範囲内にすること(できない場合は虐待のおそれ、とまで書かれています)
- 適正に餌や水を与えること
- 猫は屋内飼養に努めること
ここに「同居人がいること」「日中在宅できること」といった世帯の条件はありません。一人暮らしかどうかではなく、その暮らしで管理しきれるかが問われている、というのが一次資料の建て付けです。
なお、保護猫の譲渡では団体ごとに独自の条件を設けている場合があります。条件は団体によって違うので、譲渡を考えている場合は各団体に直接確認してください。
材料1: 留守番。数値の上限は無いが、向かない猫はいる
一人暮らしで最初に気になるのは留守番だと思います。ここで大事な事実がひとつ。「◯時間まで大丈夫」という数値の基準は、公的資料にも獣医学会のガイドラインにも存在しません。詳しくは猫の留守番は何時間まで?で一次資料を横断して確認していますが、時間数を語っているのはブログや商用メディアだけでした。
数値の代わりにiCatCareが示しているのは、質的なガイダンスです(出典1)。
猫はかなり自立していて、通常は犬より長い時間、留守番できる。ただし、幼い子猫・シニア猫・身体的な健康問題のある猫・問題行動のある猫、あるいは飼い主と特に強い絆のある猫は、長時間ひとりでいることに向かない場合がある。
このリストは、一人暮らしにとって読みごたえがあります。裏返すと、いちばん留守番に向いているのは健康な成猫です。日中フルタイムで家を空ける生活を変えられないなら、留守番に向かない時期の子猫より、成猫を迎えるほうが組み合わせとして現実的になります。子猫との暮らしを考えている場合は、子猫の育て方で書いたとおり、食事の回数も多く、目をかける時間が必要です。
留守番そのものの準備(水・フード・トイレ・室温・閉じ込め事故の防止)は留守番の記事に、夏の室温管理は猫の暑さ対策にまとめています。
材料2: お金。全額をひとりで負担する
猫の費用は、同居人がいれば分担や立て替えができますが、一人暮らしでは全額が自分の家計から出ます。金額そのものは世帯構成で変わらないのに、負担のかかり方が変わる。ここが一人暮らし特有のポイントです。
一人暮らしに限った飼育費の公的統計は見当たりませんでした。飼育費の調査として大きいものはありますが、非会員の商用サイトによる利用が許諾されていないため、このサイトでは平均額を載せません。代わりに、うちの2匹の実額を公開しています。
- フード: 2匹分で3ヶ月ごとに税込10,164円(定期便)
- ペット保険: ココが70%プランで年34,140円、ちくわが50%プランで年28,830円(どちらも多頭割引2%適用後)
毎月の内訳は猫2匹の毎月の飼育費に、初期費用も含めた全体像は猫を飼う費用のリアルにまとめています。1匹ならこれがそのまま半分になるわけではありませんが、実額の手ざわりはつかめるはずです。急な医療費は貯金か保険かという論点も、ペット保険はいらない?で実契約を開示しながら書いています。
ここに挙げた金額はうちの2匹(n=2)の実測で、猫の飼育費の平均ではありません。フードの銘柄・体格・保険のプランで金額は大きく変わります。
材料3: もしもの備え。「自分しかいない」を設計しておく
一人暮らしと多人数世帯のいちばん大きな違いは、留守番の長さでもお金でもなく、自分が動けなくなったときの代わりがいないことだと思います。急な残業や外泊ならまだしも、入院となると、水とフードの継ぎ足しをする人が誰もいません。
iCatCareは、家を空けるときについてこう案内しています(出典1)。
家を空けるときは、信頼できる友人・家族に世話を頼むか、ペットシッターやボーディングキャッテリーを検討するとよい。
一人暮らしでこれを実行するには、頼める相手を飼う前に決めておく必要があります。鍵の受け渡しをどうするか、フードやトイレの場所をどう伝えるか。いざというときに探し始めるのでは間に合いません。近くの友人・家族でもいいし、地域のペットシッターを一度お試しで使っておくのも手です。
もうひとつ、iCatCareは迎えるタイミングについても書いています(出典1)。
この先数週間のうちに、長く家を空ける予定がある時期は避けること。
引っ越しや出張が続く時期に迎えない。地味ですが、一人暮らしでは代わりに慣らしてくれる人がいないぶん、効いてくる一文です。
うちの場合(一人暮らしではない家の、家を空ける記録)
くり返しになりますが、うちは一人暮らしではありません。なので、ここに書けるのは「一人暮らしの実体験」ではなく、家を空けるときにうちがどうしているかという隣接する実測だけです。
うちの留守番は最長で1日くらい。そのあいだは見守りカメラで様子を確認しています。帰宅すると、2匹そろって玄関で待っています。
この記録はうちの2匹(n=2)のものです。一人暮らしの飼育環境を代表するものではなく、「1日くらいなら大丈夫」と一般化するものでもありません。
まとめ
- 「一人暮らしでは飼えない」という公的基準は存在しない。環境省の基準が求めるのは管理できる範囲で飼うことなどの質的義務(出典2)
- 留守番の時間数に公的基準は無い。iCatCareのリストでは子猫・シニア・持病・強い絆の猫は長時間に向かない=健康な成猫がいちばん留守番向き(出典1)
- 費用は全額ひとり負担。平均額は出典の使える統計が無いため載せず、うちの実額(フード3ヶ月10,164円・保険2匹で年約63,000円)を公開
- いちばんの違いは代わりがいないこと。世話を頼める相手と段取りを、飼う前に決めておく(出典1)
- 長く家を空ける予定がある時期には迎えない(出典1)
迎えるかどうかの判断材料として、猫を飼う費用のリアルと留守番の記事もあわせてどうぞ。
くり返します。この記事は診断・治療の指南ではありません。個々の猫の健康や留守番の可否は、年齢・体調・性格で変わります。迷うときは動物病院や譲渡元にご相談ください。
よくある質問
一人暮らしでも猫は飼えますか?
「一人暮らしでは飼えない」という公的な基準は存在しません。環境省の家庭動物の飼養基準が求めているのは、管理できる範囲内の頭数で飼うこと、適正に餌や水を与えること、屋内飼養に努めることといった質的な義務で、世帯の人数は条件になっていません。実際に判断材料になるのは、留守番の長さ、費用を一人で負担すること、急に帰れないときの備えの3つです。この記事ではそれぞれを一次資料と実測で整理しています。
一人暮らしで子猫から飼うのは難しいですか?
iCatCareは、幼い子猫・シニア猫・持病のある猫・飼い主と特に強い絆のある猫は長時間の留守番に向かない場合があるとしています。日中フルタイムで家を空ける一人暮らしと、留守番に向かない時期の子猫は、この点で相性の悪い組み合わせです。このリストを裏返すと、いちばん留守番に向くのは健康な成猫なので、生活時間が変えられないなら成猫を迎える選択も現実的です。どの月齢・年齢の猫でも、迎えた直後は環境に慣れる時間が必要です。
一人暮らしの猫の留守番は何時間までなら大丈夫ですか?
「◯時間まで大丈夫」という公的・獣医学的な数値の基準は存在しません。iCatCare・AAHA/AAFP・環境省のどの一次資料にも留守番時間の規定はなく、時間数を語っているのはブログや商用メディアです。iCatCareが示すのは、猫は犬より長く留守番できるのが普通だが向かない猫がいる、という質的なガイダンスです。時間の上限より、水・フード・トイレ・室温といった環境の準備と、その子が留守番に向いているかで考えるのが現実的です。
一人暮らしで猫を飼うと費用はどれくらいかかりますか?
一人暮らしに限った猫の飼育費の公的な統計は見当たりません。飼育費の内訳を公表している大きな調査はありますが、非会員の商用サイトによる利用が許諾されていないため、当サイトでは平均額を載せていません。代わりに、うちの2匹の実額を公開しています。フードは2匹分で3ヶ月ごとに税込10,164円、ペット保険は2匹で年間63,000円ほどです。一人暮らしの場合、この種の金額を全額ひとりで負担することになります。内訳は費用実測の記事をご覧ください。