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くらし

猫の熱中症、サインと予防【公的資料まとめ】

このページのまとめ

猫の熱中症について、環境省・査読論文・環境省シンポジウム資料といった一次資料だけを根拠にまとめました。この記事の守備範囲は「気づくべきサインと、その手前で防ぐ予防」です。猫の平常体温は36.7〜38.9℃(Levy 2015・査読)、体温が40℃を超えると危険とされます(環境省シンポ)。処置の手順は書きません。ぐったり・ふらつき・激しいパンティングなど、いつもと違う様子に気づいたら、涼しい場所へ移してすぐに動物病院へ連絡してください。この記事は診断・治療の指南ではなく、獣医師の監修も受けていません。

先に結論を書きます。猫の熱中症でいちばん大事なのは、重くなる前のサインに気づくことと、その手前で環境を整えて防ぐことの2つです。ぐったりして動かない、ふらつく、口を大きく開けてハアハアが止まらない——こうしたいつもと違う様子に気づいたら、涼しい場所へ移して、すぐに動物病院へ連絡してください

この記事では、体を冷やす手順のような処置のやり方は書きません。誤った自己処置はかえって危険になり得るからです。書くのは「気づくためのサイン」と「防ぐための環境づくり」まで。あとの判断は動物病院に任せる、という線を守っています。

この記事は一般的な予防情報です。診断や治療の指南ではなく、獣医師による監修も受けていません。数値は下部の出典に挙げた一次資料にもとづきます。猫の様子にいつもと違うところがあれば、自己判断せず早めに動物病院へご相談ください。緊急時はかかりつけ、夜間・休日は近くの救急動物病院に連絡してください。

この夏クラスタでの、この記事の守備範囲

このサイトには夏の暑さについて3つの記事があります。答えが重ならないよう、役割を分けています。

記事守備範囲こんなときに読む
熱中症(この記事)緊急性と気づくべきサイン危険な状態を見逃したくない・何度から危ないか知りたい
夏バテだるさ・食欲の変化元気や食欲が少し落ちてきた気がする
暑さ対策室温・湿度・留守番の環境づくり部屋をどう整えれば防げるか知りたい

この記事は「熱中症=命に関わる緊急事態と、そのサイン」を担当します。日々の環境づくりは暑さ対策編、少し元気がないかも、というレベルの話は夏バテ編にまとめました。

そもそも猫は、なぜ暑さに弱いのか

猫が暑さに弱いのには、体のつくりの理由があります。環境省のチラシと、環境省のシンポジウム資料は、どちらもこう説明しています。

  • 猫(や犬)は、汗腺が肉球などにしかありません。人のように全身の汗で体温を下げられません。
  • そのため体温調節は、血液の対流や、口呼吸(パンティング)による放熱がメインになります。
  • ところが、気温が体温近くまで上がると、呼吸による体温調節がうまくできなくなってしまうのです。

つまり、猫が口を開けてハアハアしている時点で、体はもう「体温を下げようと必死な状態」だということです。人の感覚で「これくらいの暑さなら大丈夫」と思っても、猫にとっては別の話になります。

平常体温と、危険とされる体温(出典を分けて書きます)

数字を2つ挙げます。ただし出典が別なので、分けて書きます。ここは混ぜないことが大事なところです。

平常体温は、査読論文の値です。 健康な成猫の直腸温の基準範囲は 36.7〜38.9℃(平均37.8℃)。これは成猫200匹を調べた査読論文(Levy 2015)で報告された値です。

危険とされる体温は、環境省シンポジウム資料の説明です。 そのシンポ資料(井上獣医師)は、猫や犬の体温を「38℃程度」とし、体温が40℃を超えると熱中症の危険がある、平常からわずか1〜2℃しか余裕がない、と述べています。

平常が38℃前後で、40℃を超えると危険。その差はほんの数度です。「まだ大丈夫」と思っているうちに、あっという間に危険域に届いてしまう——この余裕のなさが、猫の熱中症の怖いところです。

ここで挙げた体温の数値は、体温計で測って自宅で重症度を判断するためのものではありません。「平常からの余裕がとても小さい」ことを知るための目安として読んでください。

気づくべきサイン(重症度の順・受診を急ぐ目安として)

環境省のシンポジウム資料には、重症度の順に並べた様子の表があります。これを「受診を急ぐ目安のサイン」として紹介します。自分で重症度を判定するための表ではありません。

段階資料に書かれている様子
軽い段階口を開けてハアハアする(パンティング)/落ち着きがなくなる
進んだ段階高熱(40℃近く)/吐き気や下痢(吐血・血便が出ることも)
重い段階意識がなくなる

大事なのは、軽い段階のサインを見逃さないことです。パンティングや落ち着きのなさは、すでに体が暑さに対処しきれなくなり始めているサインです。ここで気づければ、涼しい場所へ移して病院に連絡する、という早い動き出しができます。

なお、これらのサインは熱中症だけで出るものではありません。だからこそ「自分でこれは熱中症だ、これは軽い」と決めつけず、いつもと違うと感じたら受診の相談をするのが安全です。

サインに気づいたら、どうする?

この記事の一番大事な部分です。やることは2つに縮めます。

  1. すずしい場所へ移す(エアコンの効いた部屋・風通しのよい日陰など)
  2. すぐに動物病院へ連絡する

体をどう冷やすか、水をどう飲ませるか、といった処置の手順は、この記事では書きません。環境省のシンポジウム資料には冷やし方の記述もありますが、急に冷やしすぎたり、意識のはっきりしない猫に無理に水を飲ませたりすると、かえって状態を悪くする危険があります。だから当サイトは、具体的な処置は動物病院の指示に委ねるという線を引いています。

連絡するときは、いつから・どんな様子か(ぐったり、吐いた、けいれんなど)を伝えられると、病院側も準備しやすくなります。夜間や休日は、かかりつけが閉まっていることもあります。近くの夜間・救急動物病院の連絡先を、暑くなる前に調べておくと、いざというときに動きやすいです。

予防が最大の対策(ここは断定して書けます)

熱中症は、起きてから対処するより、起こさないことがはるかに大事です。予防については環境省のポスターとiCatCareで一次資料がそろっているので、ここは安心して書けます。

環境省の2025年版「防ごう!ペットの熱中症」ポスターは、次のように案内しています。

  • 室内は適切な温度・湿度を管理し、猫が自分で快適な場所に移動できる環境を整える
  • 屋外(係留時)は直射日光を避け、日陰があり風通しのよい場所を選び、十分な水を用意する
  • 散歩などは早朝や夜の涼しい時間帯に
  • 短時間でも車内に残さない。車から離れるときはペットと一緒に行動する

猫の専門団体 iCatCare も、新鮮な水をこまめに替える・水飲み場を複数置く・涼しい日陰の退避場所をつくる・物置や温室、車の中に閉じ込めない(猫が涼を求めて入り込むことがある)ことをすすめています。

車内について、環境省のチラシはさらに踏み込んだ数字を挙げています。気温35℃の炎天下で、窓を閉め切りエンジンを止めた車内は、わずか15分で人体にとって危険なレベルの暑さ指数に達する(この数値の元はJAFの車内実験です)。「すぐ戻るから」は通用しない、と考えたほうが安全です。

室温や湿度の具体的な目安、留守番中の工夫は、暑さ対策の記事にまとめました。あわせて読んでください。

リスクが高いとされる猫について(断定はしません)

「こういう猫は熱中症になりやすい」という話は、ネット上にたくさん出回っています。ただ、その多くは保険会社のブログや監修まとめ記事が出どころで、査読論文や公的資料で確かめられたものは限られます

一次資料の範囲で言えるのは、環境省シンポジウム資料と公益財団法人 日本動物愛護協会のページが挙げている、短頭種(鼻の低い猫)・高齢・肥満あたりまでです。腎臓病や心臓病など、特定の持病と熱中症リスクを結びつける断定は、一次資料では確認できませんでした。持病のある猫の夏の過ごし方は、一般論で決めつけず、かかりつけの獣医師に相談するのがいちばん確実です。

「猫の熱中症は年間◯件」「◯%が重症化する」といった数字は、この記事では出しません。国内の猫の熱中症統計は、信頼できる一次資料に見当たらなかったためです。出せない数字は作らない、というのがこのサイトの方針です。

まとめ

  • 猫は汗腺が肉球などにしかなく、暑さにとても弱い。口呼吸が追いつかなくなると危険
  • 平常体温は36.7〜38.9℃(査読)、40℃超で危険(環境省シンポ)。その差はわずか1〜2℃
  • パンティングや落ち着きのなさは、受診を急ぐ早めのサイン
  • サインに気づいたら「涼しい場所へ移す→すぐ動物病院へ連絡」。処置は病院の指示に従う
  • 一番の対策は予防。環境づくりは暑さ対策、元気や食欲の変化は夏バテ

夏はエアコンでの体重管理や食事量が気になる季節でもあります。適正体重やごはんの量が気になったら、カロリー計算機適正体重チェックも使ってみてください。多頭飼いでの留守番のコツは、多頭飼いの実録にうちの様子を書いています。

くり返します。この記事は診断・治療の指南ではありません。紹介したサインは受診を急ぐ目安で、重症度の自己判断や処置に使うものではありません。猫の様子にいつもと違うところがあれば、涼しい場所へ移して、早めに動物病院へご相談ください。

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よくある質問

猫の熱中症は、どんなサインで気づけばいいですか?

環境省シンポジウム資料(井上獣医師)では、口を開けてハアハアする(パンティング)・落ち着きがなくなるといった様子から、進むと高熱や吐き気・下痢、さらに意識がなくなる、と重症度の順で示されています。猫はもともと汗腺が肉球などにしかなく、口呼吸で体温を下げるのが苦手です。だからパンティング自体がすでに『体温を下げようと必死な状態』のサインになります。これらは受診を急ぐ目安として知っておくもので、自己判断で重症度を決めたり処置したりするためのものではありません。いつもと違う様子に気づいたら、涼しい場所へ移してすぐ動物病院へ連絡してください。

猫の平常体温は何度ですか?何度から危険ですか?

健康な成猫の直腸温の基準範囲は36.7〜38.9℃(平均37.8℃)です。これは成猫200匹を調べた査読論文(Levy 2015)の値です。一方、体温が40℃を超えると熱中症の危険があるとされ、平常からわずか1〜2℃の余裕しかない、と環境省シンポジウム資料は説明しています。平常体温は査読論文、危険域はシンポ資料と、出典が別なので分けて覚えてください。なお家庭で体温を測って自己判断するためのものではありません。

猫の熱中症を防ぐには、何をすればいいですか?

予防の柱は環境づくりです。環境省の2025年版ポスターは、室内は適切な温度・湿度を管理し、猫が自分で快適な場所へ移動できるようにすること、屋外は直射日光を避け日陰と風通しと十分な水を用意すること、そして短時間でも車内に残さないことを案内しています。iCatCareも、新鮮な水をこまめに替える・涼しい退避場所をつくる・物置や車内に閉じ込めないことをすすめています。具体的な室温・湿度の目安や留守番の工夫は、姉妹記事の暑さ対策編にまとめています。

車の中で少しだけ待たせるのも危険ですか?

危険です。環境省のチラシによると、気温35℃の炎天下で窓を閉め切りエンジンを止めた車内は、わずか15分で人体にとって危険なレベルの暑さ指数に達します(この数値の元はJAFの車内実験です)。猫や犬は汗腺が肉球などにしかなく、体温調節が苦手で暑さに弱い動物です。短時間でも車内に残さず、一緒に行動してください。

出典

  1. 環境省『防ごう!ペットの熱中症』ポスター2025年版(報道発表 press_05067・2025-06-20公表/2026-07-05確認)
  2. 環境省『ペットを車内に残さないで!』チラシ chirashi01.pdf(車内15分の数値の元はJAF・2021-08-04/2026-07-05確認)
  3. Levy JK, Nutt KR, Tucker SJ. 健康な成猫の直腸温の基準範囲(J Feline Med Surg 2015・n=200・査読/2026-07-05確認)
  4. 環境省 平成31年度熱中症対策シンポジウム『ペットの熱中症と対策』(井上快 獣医師・env.go.jp掲載/2026-07-05確認)
  5. International Cat Care『Hazardous weather and your cat』(暑熱時の予防アドバイス・英/2026-07-05確認)