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COCO & CHIKUWA

毛色・柄ずかん

茶トラの毛色はどうやって決まる?|2025年に原因遺伝子ARHGAP36が特定

茶トラの毛色はどうやって決まる?|2025年に原因遺伝子ARHGAP36が特定
このページのまとめ

茶トラのオレンジは、X染色体にあるARHGAP36という遺伝子の欠失で生まれます。2025年に九州大学とスタンフォード大学が原因遺伝子を突き止めました。オスに茶トラが多い理由も、この遺伝で説明できます。『茶トラは甘えん坊』のような性格の言説は、根拠の強さまで開示して検証します。

茶トラのオレンジ色は、X染色体にあるARHGAP36という遺伝子の欠失で生まれます。この欠失があると色素細胞でARHGAP36の発現が上がり、色素づくりが赤・橙の側へ傾きます。長く「X連鎖のオレンジ遺伝子(O遺伝子)」とだけ呼ばれてきたその正体は、2025年5月、九州大学とスタンフォード大学が同時に突き止めました(Current Biology)。ここでは、その最新の一次資料をもとに、茶トラがどう生まれるかと、「茶トラは甘えん坊」のような性格の言説をどこまで信じてよいかを、根拠の強さごとに正直に整理します。

茶トラの毛色をあらわしたイメージイラスト
柄のイメージイラスト(Illustration: COCO & CHIKUWA) Illustration: COCO & CHIKUWA

「茶トラ」という呼び名は日本で広く使われる俗称です。この日本語名そのものを定義した遺伝学の一次資料は存在しません。ここでは遺伝の仕組みを一次資料で確定させ、その表現型に「茶トラ」という通称を当てて説明します。

遺伝の仕組み

茶トラのオレンジは、色(茶)と模様(縞)の2つがそろって成り立っています。それぞれ別の遺伝子が関わります。

要素遺伝子わかっていること一次出典
オレンジ色ARHGAP36(X連鎖)欠失で発現が上がり(非オレンジ猫の約13倍のRNA)、色素が赤・橙側へ。2025年に特定Current Biology 2025(九州大学/スタンフォード)
縞(模様)Taqpepmackerel(サバ縞・キジ縞)が優性、blotched(渦巻き)が劣性Kaelin et al. 2012 Science
縞が必ず出る理由アグーチ(ASIP)オレンジの猫はアグーチの型に関係なく必ず縞が出るUC Davis VGL Agouti

オレンジの正体(2025年の最新知見):色素細胞でARHGAP36の欠失が起きると、その発現量が非オレンジの猫の約13倍にまで上がります。これによって色素産生がフェオメラニン(赤・橙)側へ傾き、毛がオレンジになります。数値「13倍」は原著(Current Biology 2025)に載る値です。

オスに茶トラが多い理由:オレンジをつくるARHGAP36はX染色体にあります。オス(X染色体1本)は、そこにオレンジの型を1つ受け継げば全身が茶トラになります。メス(X染色体2本)は2つ揃って初めて全身オレンジになるため、相対的に数が少なくなります。片方だけがオレンジのメスは、発生初期のX不活性化(どちらか一方のXがランダムにオフになる現象)を経て、オレンジと黒がまだらになります。これが三毛やサビ(トーティ)です。

「無地の茶色」がいない理由:UC Davisの遺伝学研究所(VGL)は、オレンジの猫はアグーチ遺伝子の型に関係なく必ず縞(タビー)が出ると記しています。だから茶トラには縞が入り、一色べたの茶にはなりません。白が混じる「茶白」は、これに白斑の遺伝子が加わったものです。

「茶トラは甘えん坊」という言説の検証

茶トラの性格として「甘えん坊」「人懐っこい」といった言い方をよく見かけます。これをどこまで信じてよいか、根拠の強さから見ていきます。

毛色と行動の関連を調べた研究としては、Stelow 2016(UC Davis)があります。飼い主へのインターネットアンケート(除外後 n=1,274・自己申告)で、オレンジ系のメスや黒白・グレー白の猫が、日常のやりとりでヒトへの攻撃をやや多く報告された、という結果でした。

ただし、この結果には次の限界があります。

  • 場面によって差が消える:ハンドリング時や動物病院受診時では、毛色間の差はほとんど見られませんでした(原文で little difference)。
  • 飼い主の主観アンケート:因果ではなく関連の示唆にとどまり、自己申告のバイアスもあります。
  • 著者自身が保留:毛色を決める遺伝子が行動にも関わる可能性は示唆しつつ、「仮説の検証にはさらなる研究が必要」と述べています。

つまり「茶トラは甘えん坊」という俗説を、この研究は肯定も否定もしていません。1件の飼い主調査があるが場面依存で差が消え、著者も要追加研究としている——ここまでが、いま言える正直なところです。性格には大きな個体差があり、毛色から決まるものではありません。

知っておきたいこと

茶トラの毛色そのものが、特定の病気に直結するという一次資料は見当たりません。毛色は色素の話であり、健康状態は食欲や体重、動きなど日々の様子から判断します。いつもと違う様子があれば、自己判断せず動物病院に相談してください。

関連して、三毛のページでは、オレンジのメスがまだらになる仕組みと「三毛のオスが極めて稀な理由」を詳しく扱っています。柄そのものの並びは毛色・柄ずかんのハブから、迎える猫を性格から考えたいときは猫種診断猫種ずかんもあわせてどうぞ。

出典について

このページの遺伝子名・数値は、下の「出典」に挙げた一次資料(Current Biology 2025のプレスリリース、UC Davis VGL、査読論文)で2026年7月5日に内容を確認したものだけを載せています。出典を示せない数値は書いていません。

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よくある質問

茶トラのオレンジ色はどうやって決まりますか?

X染色体にあるARHGAP36という遺伝子の欠失が原因です。この欠失があると色素細胞でARHGAP36の発現が上がり(非オレンジの猫の約13倍のRNA)、色素づくりが赤・橙側へ傾きます。2025年に九州大学とスタンフォード大学が同時に突き止めた最新の知見です。

茶トラにオスが多いのはなぜですか?

オレンジをつくる遺伝子がX染色体にあるためです。オスはX染色体が1本なので、そこにオレンジの型が1つあれば全身が茶トラになります。メスはX染色体が2本あり、2つ揃って初めて全身オレンジになるので、相対的に少なくなります。

茶トラに『無地の茶色』がいないのはなぜですか?

UC Davisの遺伝学研究所は、オレンジの猫はアグーチ遺伝子の型に関係なく必ず縞(タビー)が出ると記しています。そのため茶トラは縞が入り、無地一色の茶にはなりません。

茶トラは甘えん坊で人懐っこいって本当ですか?

毛色と性格を結びつける言説には、Stelow 2016という1件の飼い主アンケート調査(n=1,274)があります。ただしオレンジ系で差が報告された場面は限られ、ハンドリング時や動物病院受診時では毛色間の差はほとんど見られませんでした。著者自身も『さらなる研究が必要』としており、断定はできません。性格には個体差があります。

出典

  1. Current Biology 2025-05-15:オレンジ猫の原因遺伝子ARHGAP36の特定(九州大学/スタンフォード大学。EurekAlertプレスリリース・2026-07-05確認)
  2. Neuroscience News:ARHGAP36とオレンジ毛色の解説記事(2026-07-05確認)
  3. UC Davis VGL — Agouti (cat):オレンジは非アグーチでも必ず縞が出る(2026-07-05確認)
  4. Stelow EA, Bain MJ, Kass PH 2016. The Relationship Between Coat Color and Aggressive Behaviors in the Domestic Cat. J Appl Anim Welf Sci 19(1):1-15(2026-07-05確認)